前を歩いている男に | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

詩の感想・批評や映画の感想、美術の感想、政治問題などを思いつくままに書いています。

前を歩いている男に

前を歩いている男に追いつき、追い抜いた。
古本屋の前で。何度も通るが、行こうとするとたどりつけない
饅頭屋「駒や」の近くの、古本屋。

その瞬間、どこへ行こうとしていたのか忘れてしまった。
茶色の箱に入った古い活字の本がガラスのむこうに並んでいる、
背表紙の文字が読めそうで読めない男はガラスの半透明の影になり

本で埋めつくされた書架の路地に消えていく。
入れ代わり、闇の中から縁が変色した
別の男が出てきて、ことばのからだをすりぬけていく。

古いセーターの固くなった匂いと、積みかさなった本の匂いが似てくる。
そんなことばが、狭い犬小屋に閉じこもっている「駒や」の
柴のカタクナのように感じられる昼。

*

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