カフェのテーブルサイドの小さなランプが
女の指に小さな影をつくって、散らかした。
森のなかの蝶のように
隠れたりあらわれたりするのを見ていた。
「誰にも知られたくないこと」という作文のテーマが出たとき、
そんな文章をつくったら、ラウラ先生は不思議な顔をした。
テーブルの下で裸の膝が閉じたり開いたりするのでどきどきした、
と書きたかったが「膝」ということばがわからなかったので。
「あら、そっちの方が秘密っぽいわね」
傷ひとつない冬の午後が消えてしまった。
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