こんなことを書いてもこんなことを書いても赤坂の裁判所の脇を歩いていると、堀の水を循環させる排水口の近くで鯉の白い肌と赤い模様が灰色の水の下で固くなっている。こんなことを書いても今は誰も詩とは思わない。緑色に舗装された自転車道の左側には駐輪用の台が一列に同じ間隔で明治通りまでつづいている。この自転車をとめる台のねずみ色も、また冬の光のなかで動かずに並んでいる。