赤坂門の手前で雨がはじまった。
ことばの背後で一つ傘が開く音がした。
とってのところにあるボタンを押すとバネが働いて、
ぽんと空気をはねとばして開く傘の音が。
足音がさらに背後から駆けてきて、
空中に残っている音を追い越していく。
少し遅れて、ことばの隣で透明な傘が開き、
それから次々に、ぽん、ぱん、しゅっ、ぽん、ぱんっ。
東西に走る明治通り、南北にのびる大正通り、
区役所の裏の路地にも図書館横の一方通行の道、
会社の屋上から見える海につづく道に。
小学校の校庭だけは無音のまま放課のチャイムを律儀に待っている。
耳は、風に舞いあげられた傘になって、
傘が開きつづける街の上を飛んでいく。
足は、傘の進んでくる方向を逆に歩き、ジグザグに歩き、
リズムをひっかきまわしている。
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