本のなかを、 | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

詩の感想・批評や映画の感想、美術の感想、政治問題などを思いつくままに書いています。

本のなかを、

本のなかを走っている鉄道を八時間かけてたどりついた冬の朝、
ことばは、ホテルのベッドに横たわっている男を書きはじめる。
突然降りはじめた雨が窓の外側を流れている。
その向こうで葉を落とした梢が激しく揺れ、影が乱れた。
ことばは、音楽会に行くべきかどうか思案している男を書くべきかどうか迷っている。
男はまったく希望を持っていない--二度手術をしたあとの父のように。
そう書くのに音楽会と雨は似つかわしいのかどうか。

しかし、それはあしたの朝のことであって、いまは夜。
枕元のスタンドの黄色い光は、広げたノートのうえに鉛筆が小さな影をつくっている。
書こうとして書けないことの、




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