高速バス乗り場 | 詩はどこにあるか

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高速バス乗り場

高速バスを待っているあいだに私たちはだんだん似てくるのがわかった。
「いまカーブを曲がってきたのは空港へ行くバス、
十分待ったが、あと二十分待ってもこない。」
見知らぬそのひとに私は言いたくてしようがなかったが、
私の方をわざと見ないようにしている女もそう考えている。

右手、あの坂の方からバスはくるはずだが、
道路はどんどん出発点のほうへ向かって伸ばされいくので
バスはどうしても前へ進めない。
左手、銀行の角を曲がったところから始まる道路も
どんどん目的地へ伸びていくのでバスは永遠に目的地につけない。

聞いているかい? 聞かなくてもわかる
バス乗り場を地下のターミナルに変えてみれば状況が悪化しているのはわかる。
バスはヘッドライトをつけて何度もぐるぐるまわるだけだ。
止まろうとする瞬間に案内板の行き先が変わり、
またターミナルをまわり直さなければならない。

それは私が考えたことか、あるいは彼女が考えたことか。
高速バスを待っているあいだに私たちはだんだん似てくる。
頭の中で反芻しているのは私の声か、彼女の声か、あるいは別の誰かのあきらめ。
もう深夜の一時になった。ホテルへ帰る路線バスの最終便はない。
窓から見える月は欠けたところがない満月。