頭の中から
銀行とドラッグストアの間の舗道を通ったとき
頭の中からアカシアの木が消えていた
と、私はノートに書く。
春、花房のかたまった形をノートに写し、
アカシアと書いたノートに。
「ここの花はピンクだけれど、テレビ局の前のは白いよ」
地図を書いて、そのことも覚えた。
それから何度も書き直し、ことばの順序も変えてみた。
通りの名前を架空のものにしたり、
花の色と光のやわらかさを入れ換えたりした。
信号が変わるまで、
頭の中で、春に書いたことばを繰り返した。
やりなおしたかった。
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