車のライトが
薄暮の街で車のライトがひっきりなしに衝突する、
だれがどこへ走っていくか気にしない。
一本の車線を守り抜くより次々に変えた方がスピードが出る。
知っていることは、それだけだ。
ときどき前の車のバックミラーから跳ね返ってくる輝きがある。
死んでしまったライトの破片だ。
正面衝突した光は反動でビルの壁にぶつかり、信号の柱にぶつかる。
衝撃音は、周波数が違いすぎて聞いたものはいないが、
どんなまぼろしよりも網膜に焼きつく。
ここだ、昔、
信号を無視してカーブしたライトが空を飛び、
横転しながら灯台の光のように一回りした。
そのとき反対側のビルの三階では
宝石を盗んでいた男の影が壁まではねとばされた。