卵を焼く匂いが | 詩はどこにあるか

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卵を焼く匂いが

卵を焼く匂いがする。あまくてやわらかい。
バターがとけるとき、フライパンからのぼってくるひかり。
こげる寸前のあわだち。
冷蔵庫の扉を閉じる音は素敵だ。
ばたん。ぱたん。

 一方に人の顔や目つき、服装の変わりに話したことばだけを
            書いておけばいいという意見があり、
       他方に人の言うことは要約すればおなじになる。
     ことばではなく(また口ほどに物を言う目ではなく、
                  無意識に動く手、特に
    左手の指の動きを書き留めるといいという意見がある。

皿を並べるように、
ことばがたくさんならんだが
多くの意見を持っていなかった。
きっと、
かぎられたことばでゆっくりと話す方ががいい。
シンプルな卵焼きのように、
切ったときにやわらかな内部が崩れながらあふれるような。








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発売は限定20部。部数に達し次第締め切り。
なお「谷川俊太郎の『こころ』を読む」(思潮社、1800円)とセットの場合は2000円
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「谷川俊太郎の『こころ』を読む」「リッツッス詩選集」「雨の降る映画を」三冊セットの場合は6000円
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