西脇順三郎の一行(107 ) | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

詩の感想・批評や映画の感想、美術の感想、政治問題などを思いつくままに書いています。

西脇順三郎の一行(107 )


「郷愁」

女のようにホホホホホと笑つた

 これは単に笑った「森先生」を描写しているのではない。「ホホホホホ」とていねいに「ホ」を五回繰り返している。「意味」ではなく、「ホ」を五回音にしたかったのである。
 その音のこだわりのまえに「郷音」(土地の訛り)のことを書いているが、それも印象的だ。西脇は、標準語の音よりも「人間」の生の声、声がもっている音が好きだったのだと思う。それが、この「ホホホホホ」にも出ている。