西脇順三郎の一行(106 ) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(106 )


「トゲ」

トウガラシが醍醐寺の塔のように

 トウガラシという自然の小さなものと醍醐寺のとりあわせ--こういう組み合わせに出合うと、確かに詩は異質なものの出会いなのだと思う。
 この一行のなかには濁音が美しく響いている。また「トウ」がらし、と「塔(とう)」の音の重なり、引きのばれれる声のよろこびがあって、さらに「のように」にそれがつながっていく。「……のように」というのは、まるで小学生の「比喩」のような書き方だが、その「よう」が音としても美しく響くところが西脇の特徴だろう。