西脇順三郎の一行(102 ) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(102 )

「ヒルガオ」

骨接ぎの入口のザクロの花に                   (112 ページ)

 「骨接ぎ」は「整骨院」のことである。いまは「骨接ぎ」とは言わないだろう。西脇がこの詩を書いた当時も医院(病院)には「整骨院」と書かれていると思う。しかし、西脇はそのとりすましたことばよりも、昔からひとが口にしている「音」が好きなのだろう。昔からある「音」は、それだけ「肉体」をくぐってきている。「肉体」によってととのえられた「思想」を含んでいる。
 それは「工業品(加工品)」の音ではなく、野菜や雑草のように、人間の「大地」から自然発生的に生まれてきた「音」になったことばである。「骨」を「整える」ではなく、あくまで「骨」を「接ぐ」。「接ぐ」には「整える」よりも生々しい肉体のうごきがある。
Ambarvalia/旅人かへらず (講談社文芸文庫)
西脇 順三郎
講談社