西脇順三郎の一行(98) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(98)

「夏至」

ヨハネのマラルメのゲジゲジの

 ここからは詩集『人類』の作品。
 ヨハネとマラルメは西洋の古典的(学問的/精神的/芸術的?)な存在。ゲジゲジは虫。ゲジゲジが1行に紛れ込むこと、結合されることによって、ヨハネはマラルメに「知識」のエッジとは違う輪郭ができる。
 たとえば、これが

ヨハネのマラルメの薔薇の

 だったとすると1行はおもしろくない。薔薇がヨハネとマラルメを統合してしまう。薔薇ということばがもっている「文学(教養)」がひとつの「美」になる。けれどゲジゲジという異質なものが結合されると、それは美にはならない。なりようがない。つながっている何かが切断される。
 その切断の、断面としてのエッジがある。