西脇順三郎の一行(79) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(79)

「天国の夏(ミズーリ人のために)」

よく考えてよく耳を傾けてみたまえ                 (91ページ)

 この一行を選ぶのは、私の「我田引水」というものだろうか。そうかもしれない。それよりも「茄子の皮よりはまだ価値がない」をとりあげて、「茄子」好みの西脇に言及した方がいいかもしれない。価値判断に茄子を出してきた段階で、西脇はそれにすでに価値を与えている--というような「意味」を語った方がいいのかもしれない。
 けれども、やはり、この行が好きなのだ。あ、西脇だ、と思うのだ。「よく考えてよく目を開いてみたまえ」ではないのだ。「耳」で何かを聞く。それは「自分の声」ではなく「他人の声」を聞くということだ。「他人」が「考え」が閉鎖する(完結する)を防いでくれる。
 きのう触れた「自然の野蛮」というものは「知性」からみると「他人の力」そのものである。「他人」が「自己」を洗い流し、新鮮な詩を噴出させる。