西脇順三郎の一行(78) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(78)

「天国の夏(ミズーリ人のために)」

あの秋の末のくさつた黄色い野菊だ                 (90ページ)

 西脇の書く自然は野蛮な味がする。きよらかな野蛮もあるが、汚い野蛮、酷たらしい野蛮もある。そして、逆説的な感覚になってしまうが、その汚らしく、酷いものが、なまなましいいのちを噴き出す。腐った野菊というのは死そのものだが、腐るところから生まれるどろどろしたいのちのようなものが、なんとも激しい。
 それは「知性」を破る野蛮の本質そのものである。
 西脇の知性はいつも野蛮と向き合っている感じがする。