西脇順三郎の一行(63) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(63)

 「えてるにたす Ⅱ」

永遠を象徴しようとしない時に                  (75ページ)

 「えてるにたす Ⅱ」の書き出し。この行だけでは意味はわからない。2行目は「初めて永遠が象徴される」とつづき意味が完結する。意味には深入りせずに……。
 この1行目が印象に残るのは「しようとしない」という音があるからだ。言い換えると。
 「しようと望まないとき」「しようと欲しないとき」「しようと試みないとき」「しようと努めないとき」など、いろいろな言い方をしても、意味は変わらない。(と断言できるかどうかわからないが、類似の意味の周辺をことばが動いていることがわかる。)
 それなのになぜ西脇は「しようとしない」、「しょうちょうしようとしない」と「し」の音が3回出てくるようなことばを選んだのか。その音のなかに何かを感じたのだ。この感じは「直感」であって、ほかには説明のしようがないものかもしれない。
 その説明のできない音の好み--それに、少し触れる。
 そういう瞬間が、私は好きである。