西脇順三郎の一行(62) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(62)

 「えてるにたす Ⅰ」

町で聞く人間の会話                        (74ページ)

 「意味」について書きたくないなあ、と思っているのだが、きょうはとても疲れているのか、頭が「意味」に頼ってしまう。
 この一行は、「淋しさ」をあらわしている。西脇の「淋しさ」の定義に合致するのが「町で聞く人間の会話」である。その会話というのは「あいさつ」である。何も意味しない。ただ人間が存在することを互いに認めるときのことば。それを西脇は「淋しい」と呼んでいる。
 他の「淋しい」がたくさん書かれているが、どれも、存在する「もの」である。ただ存在するだけの「もの」、「意味」をもたない「もの」。「意味」をもたないけれど、存在すると認めることができる「もの」。