西脇順三郎の一行(50) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(50)

 「失われた時 Ⅳ」

沖の石のさざれ石の涙のさざえの                  (62ページ)

 「の」の連続によることばの連結がはてしなくつづく部分の1行。いろいろおもしろい行があって、いま引用しながら、ふと目に飛び込んできた別の行にすればよかったかも……と思ってしまうのだが。
 最初の印象で書くしかない。
 「さざれ」と「さざえ」の似通った音がおもしろい。濁音があるところが、私は好きである。私には「さ行」というのは清音の印象があり、弱い感じがしてしまうが、濁音によって音が豊かになる。なみ「だ」の「だ」の濁音ともひびきあう。