西脇順三郎の一行(48) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(48)

 「失われた時 Ⅳ」

虎と百合の祈祷をする                       (60ページ)

 虎と百合の結びつきに、はっとする。虎にどんな花が似合うのか、想像したことがなかった。だから驚く。たぶん、それだけではなく、それまでの行が「空と有とが相殺するところにゼロがある」(この「相殺」という音はすばらしく美しいなあ)というような抽象的なことばだったために、虎がいきいきと動く。さそわれて百合も白く巨大に輝く。笹百合なんかではなく、カサブランカよりももっと大きな花。中には虎の黄色に似た花粉が散らばっている。虎の外側(?)黄色と黒、百合の内側の黄色と白--その対比も目に浮かんだ。