「第三の神話」
ジオヴァンニイ・ダ・ボローニヤの女 (54ページ)
これは何のことか。教養のない私にはわからない。わからないけれど、唯一「ボローニヤ」がイタリアだとわかる。--これはいいかげんな話であって、ボローニャはイタリアとは別な国にもあるかもしれないが、私はイタリアの都市と思い込む。「ジオヴァンニイ」もイタリアっぽい名前である。わからないけれど具体的な「固有名詞」を感じさせる。
で、これがなぜおもしろいかというと。
前の部分を引用しないとわかりにくいのだが(私は一行だけ引用して感想を書くということを自分に強いているので、こういうときは非常に説明に困るのだが……)、それまでの展開は「第三の女」とか「第一の女」とか、きわめて抽象的なことばである。それが、ここでは「固有名詞」(具体)を感じさせることばの登場で世界ががらりと変わる。大きく動く。
そして、それが、私の場合、「ジオヴァンニイ・ダ・ボローニヤ」が誰なのか見当がつかないために、音そのものとして響いてくる。それがおもしろさに拍車を書ける。「い」と「お」と「あ」と「N」の音が交錯する。そして「おんな」のなかには「お」と「あ」と「N」がある--というのもとてもいい気持ちにしてくれる。