西脇順三郎の一行(26) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(26)

 「無常」

バルコニーの手すりによりかかる

 書き出しの一行。「よりかかる」という動詞が「無常」と向き合う。「無常」というのは、正面切って向き合うというよりも、ぼんやりと、どうしていいかわからずに、何かによりかかって向き合ってしまうものかもしれない。
 「主語」は「私」なのか、それともほかのだれかなのか。
 2行目は「この悲しい歴史」。この2行目が「主語」かもしれない。そうに違いないと私は思う。その「悲しい歴史」が何を指しているかわからないが、わからないからこそ、そう思う。
 「よりかかる」という動詞のなかで、ひとと歴史が重なり、同じ姿勢をとる。それが「無常」ということだとも思う。
西脇順三郎コレクション〈第2巻〉詩集2
西脇 順三郎
慶應義塾大学出版会