『旅人かへらず/一二〇』(27ページ)
色彩の生物学色彩の進化論
「色彩」が二度繰り返される。全体が「さ行」の音で動いている。それが一行に統一感を与えている。たとえば「色彩の行動学」などということばと比較すると、そのことがよくわかる。
「生物学」と「進化論」ということばに親和力があるのも統一感を強めている。
「意味」というのは「親和力」の中で、権力的にでっちあげられるものだなあとは思うけれど、西脇は「意味」を深追いしないので、さっぱりした感じがする。
この「断章」の最後の一行「色彩の内面に永劫が流れる」の「な行(ないめん/ながれる」と「が行」のゆらぎの方が「音楽」としては美しいと思うけれど、科学的(?)なことばも「音楽」として響くという意外性があるので、「生物学/進化論」の行を選んだ。