西脇順三郎の一行(9) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(9)

 「紙芝居 Shylockiade 」

汝等行け、演劇は終つた。

 この一行は、私には、「我、酔うて眠らんと欲す、きみ、しばく去れ」(李白)を思い起こさせる。非情にさっぱりしている。興奮のあとは、たったひとりの「無」が必要である。
 この行のまわりはあまりにもにぎやかである。演劇的である。3行先には「汝等帰れ、演劇は再び始まつた。」とあるのだが--詩は、「終つた」ではつづかないのかもしれないけれど、「終わつた」で終われば、どんなにいいだろうと思う。この一行は「自己中心的」な美しい響きをもっている。