西脇順三郎の一行(5) | 詩はどこにあるか

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西脇順三郎の一行(5)

 「眼」

白い波が頭へとびかゝつてくる七月に

 波の描写、波が高いということはわかる--と書いたら、それは実感とは違う。私は波の高さを実感していない。「とびかゝつてくる」という動詞に、波のいきいきした動きを見ている。そのときは波を高いとは思わない。波を危険とは思わない。
 たとえば防波堤で、あるいは岩場で、波がたたきつけてくるしぶきを頭から浴びる。そのとき、「わああっ」と声を出して、私は喜んでいる。おもしろくてしようがない。
 そういう明るさがある。輝きがある。
 「白い波が頭へ」ということばのなかでは、また「白い波頭」ということばも動いている。