あなたはいて、 | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

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あなたはいて、

午前あなたはいて、
あなたがいなくなった午後、
屋上から見る街は
あなたと見たビルと
あなたなしで見るビルとに分割された。
あるいは分離していく。

秋の午後、あなたなしで街を見るとビルの影は直線だ。
あなたがいたとき見たビルが隠している道路が
あなたがいないときビルが隠している道路と直角に交わる。

あなたなしでビルを見るとあなたの連想が消えてビルがものになる。
ハイブリッドの車がメルセデスを追い抜いていく音がする。
十七歳のとき、ひとりで見た海を思い出す。
私は海を見るように遠い音を揺する街を見た。

私は待った。
私のなかにある海の連想が消えるのを。
私は待った。
あなたなしの街が太陽が傾くときに、
影と光に分かれて、形が色になってしまうのを。
それから動いていく。
引き潮のように。

私は否定する。
ことばが不適切に思い出にからみつくのを。
私は否定する。
あなたがいないことを。

あなたは行った。
私は待っている。
私の連想がすべて崩壊するのを。
崩壊しなければならないものを。




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