窓の下を通りながら思い出す部屋にはガラスの花瓶があった。
そして、テーブルの上に透明なものだけがつくりだす灰色の影があった。
その影は、透明なものを通り抜けることで明るくなる光とやわらかな諧調をつくるので
私たちはそれを鉛筆でスケッチして過ごした。(私はやわらかな鉛筆で、あなたは硬い鉛 筆で、
あるときはその器に水が注がれ陰影はあまくほどかれ崩れた。
しずかな曲面にとおい編み籠の規則正しい模様が映っている、
と言ったのはあなただったか私だったか、
私のなかのあなただったか、あなたのなかの私の知らない誰かだったか。
編み籠のなかにはきょう買ってきたドライフラワーがばらばらの方向を向いていた。
![]() | 季刊 ココア共和国vol.13 |
| 秋 亜綺羅,谷内 修三,小林 坩堝,高橋 玖未子,海東 セラ,葉山 美玖,金子 鉄夫,詩人アリス | |
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