私があなたを見たのは、 | 詩はどこにあるか

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私があなたを見たのは、

私があなたを見たのは街の皮膚が奇妙な仕方で剥がされたときだった。
コロシアムに降っていた雨が去ってしまうとまっすぐな光がアスファルトを覆い、
すべての影を破壊し、払いのけるようにして、
つややかな内部が完璧すぎるシンメトリーとなって輝きだした。

私があなたを見たのは起きたことのない何かについての嘘のなかだった。
たとえば廃墟の墟という文字は嘘に似ているという論理をとおるときの
直前のめまいのなかで巨大な時間がもういちど石の形にもどるのを確かめると、
あなたの視線は失ったものを無関心に変換しながら四方に飛び散った。

私があなたを見たのは裏切りたいという気持ちを思い出したときだった。
あるいは裏切られるときのせつない愉悦が甦ったときだった。
さかさまの虚像の鏡像はまっすぐな実像であり、
垂直に立つ実像の下ではさかさまの虚像が反重力の視線で対極の空を見下ろす。

私があなたを見たのは私があなたを見なかったときだ。