ヴィンセント・ミネリ監督「バンド・ワゴン」(★★★) | 詩はどこにあるか

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監督 ヴィンセント・ミネリ 出演 フレッド・アステア、シド・チャリシー、オスカー・レヴァント、ジャック・ブキャナン

 フレッド・アステアのダンスはいつも優雅だ。相手にあわせて踊る。相手を踊らせるために踊る。その視線がいつも相手の動きを受け止めている。会話がある。
 セントラルパークでシド・チャリシーと踊り始める瞬間がとてもいい。「息が合う」という表現があるけれど、まさに息があって、それがそのままダンスになる。優雅に見えるのは「息を合わせる」ではなく、「息が合う」からだろう。
 「メイキング・ブロードウェイ」というのだろうか、ミュージカルができあがるまでの舞台裏は、それはそれでおもしろいが、落ち目になった映画スターが舞台で再起をはかるというのは、ちょっと優雅なフレッド・アステアには苦しいかな。あまり生き生きしていない。その分、後半が楽しく――楽しいだけに、メイキングを省略して劇中劇の「バンド・ワゴン」だけで1作品にならないかなあ、と思ってしまう。
 ニューヨークを舞台に、ギャングがジャズを踊るなんて、とてもおもしろいと思う。荒々しくて、なおかつ優雅。うーん、男の色気がどんな具合に広がるかな――と思った。追われる女に男が巻き込まれてゆくなんて、監督はヒチコックにまかせてみたい。どんなミュージカルになるだろう。
(午前十時の映画祭「青シリーズ」35本目、天神東宝3)


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