この映画ではファーストシーンから宇宙船が登場するまでが一番好きだ。宇宙空間に「モノリス」が1個浮かび上がる。それが5個に増え、「ALIEN」という文字に変わる。「2001年宇宙の旅」に対するオマージュだね。まったく新しい「宇宙の旅」が始まるのだ、未知の存在が人間を覚醒させるのだ、と予感させる一瞬。いいなあ。と、思った次の瞬間、度肝を抜かれる。宇宙船(貨物船)の姿が「2001年」とは大違い。シンプル、スマートとは無縁。ゴシック様式である。でも、考えてみれば宇宙は真空。空気抵抗がない。どんな形をしていても同じ。いいなあ。「宇宙の旅」なんかに負けないぞ、違ったものを作ってやるんだという気迫が伝わってくる。
で、コンピュータという人間の英知の結晶と戦うというのではなく、人間では絶対にありえない存在と戦うという飛躍がいいし、なによりもエイリアンそのものの造形がすごい。全体がわからないのがすごさの頂点。タコ?みたいにくねくねする尻尾?があって、指があって、何よりも口だけの頭がある。口だけ、という印象が強いのは、口の中からまた口がむき出しになって出てくるからだねえ。口の中から歯、そしてその奥の喉からまた歯が触手のように伸びる。あるいは勃起する性器のようにむき出しになる、の方が近いのかなあ。なにしろ、アップ、アップ、アップで、なんでもレイプしてしまいそうな強靭な牙がみえるだけで、全体の大きさもわからない(こどもの時は、まあ全体が見える、見えた感じがするけど――これも何やら、子供の勃起する前の性器、子供なのに性器だけがいきいきしている、みたいなやわらかな感じがあるなあ)。わからないから、怖さが想像力のなかで拡大してゆくという映画の取り方が、それを強調する。血液が宇宙船を溶かしてしまうような強力な酸も怖いねえ。滴り落ちる、これも血というよりありあまった精液のねばねばな感じがする。
人間に寄生してしがみついていると思ったら、体内に入って体を突き破って出てくる。なんだか性器がそのまま体を突き破る感じだなあ。ジョン・ハートには申し訳ないが、エイリアンの快感が体を駆け抜ける。(あれっ、私って「男色主義」?)いやあ、「エクソシスト」の緑のへど、首の180度回転以来の何度も見てみたい気持ち悪さだねえ。好きだなあ。再見してみると意外と短くて、うーん、残念、と悔しい感じすらするなあ。何だったかタイトルは忘れたが、ジョン・ハートが類似のシーンを演じるパロディ映画があって、彼が「またか」というセリフがあったな。みんな、あのシーンが見たいんだ。やったジョン・ハートすら。
最後に生き残るのがシガニー・ウィーヴァー、女性と言うのも、この当時はびっくりするなあ。エイリアンが男むき出しの造形なので、男ではなく、女が生き延びる(最後の戦いをする)というのが生きてくるのかもしれない。女と言っても、女を売りにしていない。科学的に状況を分析し、弱みも見せない。(そのくせ、最後はスキャンティ姿をちゃんと見せるんだけれど。)で、その最後なのだけれど、やっぱりレイプシーンに見えるねえ。エイリアンがシガニー・ウィーヴァーをレイプしようとする。それをシガニー・ウィーヴァーがレイプされる寸前、ヴァギナの入り口で遠ざける。開いた宇宙船のドアからエイリアンが宇宙に蹴りだされる(真空がエイリアンを引っ張るのだけれど)、けり出されまいとしがみつく・・・。よかったというか、残念というか(と書くと叱られそうだけれど、映画だから許してね)。――続編の展開をみると、私のような期待?が多かったんだろうなあ。(映画だから許してね。)
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