私はひねくれものなのだろうか。この映画を一度もおもしろいと思ったことがない。クライマックスといっていいのかどうかわからないが、最後の酒場のシーン。シェーンを2階からライフルが狙う。そのとき、少年ジョーイが「危ない」と叫ぶ。気がついて、シェーンが振り向きざまに銃を放つ。このシーンは、まあ、許せないことはないのだが。
その前。
シェーンが、ジョーイの父親の代わりに酒場へ乗り込む。それをジョーイが追い掛ける。シェーンは馬に乗っている。少年は走っている。追いつける? 走り続けられる? どうみても小学校低学年、10歳以下。変だよねえ。一緒に犬もついてくるんだけれど、犬ってそんなに走る?
映画がリアリズムである必要はないけれど、これは、あんまりだよねえ。
途中に出てくる、暴力と自由の対立、その議論――というのも、図式的。土と生きる人間のずぶとさがなく、まるでストーリーのためのセリフ。実感がこもっていない。
そのくせ、シェーンとジョーイの母の「恋愛」だけは、セリフではなく、肉体(顔、目の動き、体の動き)で表現するという映画の王道をつきすすむ。あらあら。これって、恋愛映画? アラン・ラッドではなく、ジーン・アーサーの演技力によるものだけれど。
唯一の救いは、透明な空気かなあ。どこだろう、遠い山には雪が残っている。青い連山、青い山脈だ。その山の方へ向って去っていく男を、ジョーイの声が追い掛ける。「シェーィン」(シェーンじゃないね)。こだまが「シェーィン、シェーィン」と響く。これは、いいね。帰ってくるのは、こだまだけ。それも、少年の透明な声。せつない、というより、さびしい悲しさだね。
(「午前10時の映画祭」青シリーズ5本目、福岡天神東宝)
![]() | シェーン [DVD] FRT-094 |
クリエーター情報なし | |
ファーストトレーディング |