監督 ジェームズ・L・ブルックス 出演 リース・ウィザースプーン、オーウェン・ウィルソン、ポール・ラッド、ジャック・ニコルソン
大もての男がいる。押しが強い。陽気である。せっかちかもしれない。誕生日に豪華な腕時計をプレゼントしてくれる。女がプレゼントを開けるのを待ちきれない。女から包みを引き取ると、自分で開けて「ほら」と差し出す。
地味な男がいる。慎み深い。女がプレゼントを開けるのをじーっと待っている。プレゼントは「汚れ取りの粘土」からうまれかわった「くねくね粘土」。豪華ではないかわりに、ちょっと考えさせる「お話」がついてくる。
もしあなたがリース・ウィザースプーンだったら、どっちを選ぶ?
映画の定石通り、慎み深く、教訓話をしてくれた男を選ぶ。
でも、これっておもしろくないなあ。誰でもというわけではないが、地味な男の方なら、多くの男がなることができる。なんといっても「粘土」のプレゼントなら買えるからね。豪華な腕時計は買えないなあ。で、地味な男が選ばれるというのは、なんというか、男のひそかな夢というか、ちんけな希望だねえ。
なんだかいやだなあ、こういう「教訓」じみた恋愛映画。つまらない希望を与えてくれる映画、というのは。
映画なんだから非現実的でいいじゃないか。
ちょっとだけおもしろいのは、ジャック・ニコルソンのずるいおやじかな。犯罪を犯した。でも有罪になると刑務所から一生出てこれない。で、罪を息子(地味な男の方)にかぶせようとする。息子なら初犯なので、いずれ出所できるから、なんてね。
そのジャックに対し、地味男が、「もし女が自分を選んでくれたらその女と生きるので身代りにはなれない。でも夢がかなわないなら、そのときはお父さんの身代わりになる」という。さて、ジャックの答えは? 「グッド・ラック」(がんばれ)。あ、これって、どういう意味でしょうねえ。おかしいでしょ?
最後、ジャックは息子が女とうまくいったことを知り、「よくやった」と喜ぶのだが、あれっ、そうするとジャックはどうなる?
このわがままで変な父親を、ジャックは楽しく演じている。こういうわがままで、どこか幼稚で、でもどこかに人間らしい温かみがある人間性が、この映画を「嘘」に高めている。うれしいねえ。