ロベルト・シュヴェンケ監督「RED」(★★) | 詩はどこにあるか

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監督 ロベルト・シュヴェンケ 出演 ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレン、カール・アーバン

 中高年(老人?)を励ます映画なら、クリント・イーストウッドの「スペース・カウボーイ」という傑作がある。ガーボル・ロホニの「人生に乾杯!」というのもある。そういう傑作のあとでは、まあ、この映画は「お遊び」です。
 CIAを引退した年金生活者のスパイがCIAに狙われるという単純なストーリーなのだが、狙われるお年寄りのなかに「恋人」の若い女性が巻き込まれる、というのがストーリーを活気づかせる。彼女だけ「ストーリー」が見えていないから、方々でつまずく。だからストーリーはどうとてもなるというか、ご都合主義に変化して行ける。
 見どころ--というほどのものはないが。
 やっぱり、ジョン・マルコヴィッチは変人だよなあ、と納得させられるところがおかしい。実際にはどうなのかしらないが、LSDを何年間も投与されておかしくなった、というのは、そうだろうねえ、と思ってしまう。(そんなことはありえないだろうけれど。)傑作は、ヘリコプターがあやしい、と気づいてその登録番号(?)をメモする。次にヘリコプターがあらわれたとき、やっぱりあのヘリコプターだ、この番号だ、というのだが……。ジョン・マルコヴィッチの口にしている番号はたしかに前と同じらしいが、メモの番号があわない。ブルース・ウィリスが、メモを見ながら「これのどこが○○○○(アルファベットと数字)なんだ」と怒る。「おれが確認する」と別の男が窓に近づくと、ヘリコプターから銃弾が……。メモは正確にとれないのに、認識は正確--この変な感じが、ジョン・マルコヴィッチがやると、やっぱりそうか、と映画なのに、そう思ってしまう。このシーン(このエピソード)は映画じゃない、と思いたくなる。
 いい役者というのは、観客が「こう思いたい」と思うことを吸収して、そこに存在してくれる役者のことである。ジョン・マルコヴィッチは、まさにそういう役者である。



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