★4個は大甘の採点かなあ……。正月映画は「武士の家計簿」「最後の忠臣蔵」はおもしろかったが、洋画には印象的なものがない。で、思わず★4個になってしまった。
この映画でおもしろいというが、うまいもんだねえと思ったのが、デンゼル・ワシントンの機関車がバックで走ること。そうすると運転士はいつもバックミラーを見ていないといけない。で、カメラは走る機関車を横から(並走する形で)撮るのだけれど、そのとき必然的にデンゼル・ワシントンの顔がカメラの正面を向く。あ、やられたあ、と私は映画づくりとはなんの関係もないのだけれど、思っちゃいましたねえ。普通は、運転士は前を向いて運転する。その顔を正面から撮ると、背景はいつも運転席の後ろ。ぜんぜん風景が変わらないからね。走っている感じがしないからね。走る機関車を横から撮るとき、必然的に風景が入る。その風景の背景にして主役の顔が正面を向いている。これは高等テクニックだなあ。(これで、私は★1個余分につけてもいいかな、という気持ちになったんです。)
映画は予定調和的な展開。走る貨車をみせるだけなんですが……。そして、あとくされなく、一気に90分で終わるのだけれど。
ここで苦情というか、欲張りなことを言うと。
貨物列車をもっとセクシーにしてほしかったなあ。たとえば、スピルバーグの「激突!」。トラックがまるで人間みたいな表情をしていたなあ。この映画では、スピード感はあるのだけれど、意外とはらはらしない。どうしてだろうと、いえば、暴走する貨物列車に「人格」のようなものを感じることができないから。--無人で、ブレーキが故障して、ただ走っているだけなのだから「人格」がないといえばそれまでなのだけれど、うーん、でもやっぱり「人格」がほしい。にくらしさがほしい。怖さがほしい。人間なんかに負けてたまるか、巨大な器械なんだぞ、という乱暴な自己主張があるといいなあ。脱線装置を壊して走るシーンなんかにそういうものを紛れ込ませることはできたと思うのだけれど。
それから。
ブレーキがかかって止まるとき、そのとき残念な表情がほしいなあ。デンゼル・ワシントンたちに負ける(?)のはわかりきっている。わかりきっているのだけれど、あ、負けてしまった、悔しい、という感じ、息切れがする感じ、あえぐときの苦しい息づかいがあると、この映画はすごくなる。傑作になる。
映画はたとえ「もの」をとっても「もの」が人格をもたないかぎり、B級。「もの」が人格をもつと、はらはら、どきどきが強まり、突然A級映画になる。あの「2001年宇宙の旅」も、「ハル」が人格をもって人間に反乱するから傑作になっている。人格、というのは、「顔」でもあるね。「エイリアン」も、変な化け顔をもっているし、「ジョーズ」も顔をもっている。でも、この映画の貨物列車は顔をどこかに置き忘れている。暴走列車なのだけれど、どこかで暴走のスローモーションがあればよかったのかもしれない。スローの方がスピードを感じるということもあるのだから。
で、もし、そういう貨物列車を撮ることができたとしたらの仮定ことだけれど、デンゼル・ワシントンは顔が優等生過ぎて、やっぱりだめだろうなあ。もっと悪の強い顔がほしいなあ。この映画には。成功するのはわかっているのだけれど、失敗するのもおもしろいかな、と感じさせる顔がほしいなあ。
どうも、私は欲張りな観客みたいだ。
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