監督 マイケル・マン 出演 ジョニー・デップ、クリスチャン・ベイル、マリオン・コティヤール
犯罪ものの映画はむずかしい。犯人が悪くて、強くて、それにくわえて愛らしくなければならない。ひとなつっこさというか、知らずにひとを引き寄せる力。引き寄せるというより、相手が近づいてきて、それにのみこまれる感じ……。悪くて、強くて、ひとなつっこいから、まあ、得たいのしれないと言い換えてもいいのかもしれないけれど。
ジョニー・デップは「もてる男優」の代表的な役者だから、女性を引きつける力はあるんだろうなあ。暗い陰りのような力。ついていくと、自分の暗い欲望(?)に直に触れることができる--という好奇心(?)をそそる感じかな。
よくわからないが。
私には、ちょっと「犯人」の魅力からは遠い感じがするのだ。まず体が小さいから、強い、悪いという印象が薄い。なぜ、仲間はジョニー・デップについているかな? 頭がよくて、銀行強盗をうまくやれるから? うーん。でも、一方で、言うことを聞かないところされるかもしれないという「恐怖心」だって、ひとを引きつけるんじゃないかな? そういう「乱暴」な魅力が、ないなあ。
マリオン・コティヤールはとてもうまい。そして美人だ。あ、それに小柄。だからジョニー・デップの相手役なんだろうなあ。キム・ベイシンガーじゃあ、ジョニー・デップはこどもに見えてしまうもんなあ。
映画のできとは関係がない? そうかなあ。映画はやっぱり役者がかっこよくなければ。映画を見終わったあと、主役になったつもりで映画館から街へ出てきたい。架空の体験を「肉体」にいっぱいつめこんだまま、しばらく「主人公」でいたいなあ。
この映画で、あ、この役ならやってみたいなあ、と私が思ったのは、ジョニー・デップの最後のことばを聞き取り、それをマリオン・コティヤールに伝える刑事。二つの映画館のどっちを張り込むべきかを冷静に分析し、ジョニー・デップの遺言(?)も女にだけ伝えるという、わ、わ、わっ、すごい紳士じゃないか。私なんかお喋りで、「おまえはひそひそ話ができないのか」とひとにあきれかえられる人間なので、うーん、かっこいいなあ、と思ってしまった。
そして。
この映画のほんとうの拾い物(?)はダイアナ・クラールの「バイバイ・ブラックバード」かな。キャバレーで歌うシーンに、本人がそのまま出演し、歌っている。この歌が、最後の最後に、せつなくせつなくよみがえる。この歌声を聴くだけのために、とわりきって見るといい映画かもしれない。
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