佐々木洋一「さくら」 | 詩はどこにあるか

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佐々木洋一「さくら」(「ササヤンカの村」19、2009年07月発行)

 佐々木洋一「さくら」は春の光が見えるような(佐々木は「ひざし」ということばをつかっているが、とても美しいことばだ)詩である。

ひざしのはざまで

ひら、ひら、ひらん
ひらひら、ひらん
ひら、ひら、ひらん

ちょうどその時

軽トラックが土手の小道を走って来て
花びらを積むと
一気に加速し
現実の方へ駆け抜けて行った

ひざしをつかむと

ひらひらりん
ひらひら、ひらん
ひらひらひらん
ひざしのかげりでは

朽ちた花びらの上に
折り重なるように

ひら、ひら、ひ、ら、ん
ひら、ひら、ひらん
ひら、ひら、ひ、ら、ん

 「ひざしをつかむと」が、とてもいいのだと思う。「ひらひらひらん」と口ずさみたくなる。--と、書いたたら、もう感想を書くことはなくなってしまったのだけれど。
 同じ号の「なめくじ」もいい。
 その一番好きな行。

地べたを謙虚に点のように汚点のように進みたい

 「汚点」がいいなあ。なぜいいのか--問われるとこたえに困るけれど、「汚点」がいい。落ち着く。美しくなくてもいいんだ、という安心感がある。
 「ササヤンカの村」18の「隙間切り」というのは、「なめくじ」の「汚点」につながるような「肉体」のさみしさ、いとおしさ、理不尽としかいいようのない美しさがあるけれど、18号は2008年03月の発行なので、ここでは感想を省略。できるだけ、新しい作品の感想を書くことを心がけているので。

 

佐々木洋一詩集 (日本現代詩文庫・第二期)
佐々木 洋一
土曜美術社出版販売

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