マックG監督「ターミネーター4」(★★) | 詩はどこにあるか

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監督 マックG 出演 クリスチャン・ベイル、サム・ワシントン、アントン・イェルチン、ヘレナ・ボトム・カーター

 「ターミネーター」といえばジョン・コナー。2018年。ジョン・コナーが実際に生きている時代。となれば、ジョン・コナーが主役のはず。ところが、この映画はその鉄則を踏み外している。クリスチャン・ベイルが演じるジョン・コナーが活躍しないのである。わきに徹している。
 いや、もともとジョン・コナーは「狂言回し」。主役は「ターミネーター」だから、これはこれでいいのだ、とも言えるのだが……。
 かわって主役は、新種の「ターミネーター」。どんなターミネーターが登場するか。(初代のターミネーター、シュワルツネッガーまでスクリーンに登場するという噂が流れていたので、興味津々で映画館へ行った。)
 でもねえ。
 これが、はじまった途端にわかってしまう。サム・ワシントンが演じるのだけれど、なぜ、すぐに彼が新型ターミネーターだとわかるかといえば、彼を改造する(?)準備を進めるのがヘレナ・ボトム・カーターだからである。もっと無名の、見たこともない女優が狂言回しならいいけれど、有名すぎる。そして、彼女は死期がせまっている「がん」という設定なので、あとは登場しない--というのも、見え透いている。きっと、最後に、登場する。そして、実際に、重要な役で登場する。
 脚本が見え透いている。キャストも見え透いている。キャスティングが大失敗の映画である。
 せめて新型ターミネーターを見るからに善良なサム・ワシントンではなく、クリスチャン・ベイルが演じれば、少しは違ってきたかもしれない。クリスチャン・ベイルは子役時代から集中力のあるおもしろい役者だが、ちょっと常軌を逸しているような雰囲気がある。「悪役」の方があっている。そういう敵か味方かわからない雰囲気がないと、新型ターミネーターは演じられない。観客が、これはほんとう? それとも罠? とわけがわからなくならないと、この映画はおもしろくないのだ。
 だいたい、え、いま、なんていった? 人間関係がどうなっている? そんなことってありえる? という疑問をぶっとばして映像が暴走するのがターミネーターの魅力であるはずなのに、きっとサム・ワシントンが善良な(寝返った?)ターミネータをやるんだな、とわかってしまうと、見ていて楽しみがない。
 また、怖いシーンもまったくない。
 1回目の「ターミネーター」に敬意をはらっているつもりなのだろう。溶鉱炉(?)の溶けた鉄鉱石を浴びても、そのなかからターミネーターが立ち上がってくるシーンもあるのだが、怖くない。見慣れてしまっている。
 1回目には、タンクローリーの爆発でバラバラになりながら、ターミネーターが腕だけになってなおも追いかけてくるという傑作シーンがあった。私は、そこで大笑いしてしまった。「怖い」をとおりこして、え、こんなことまでやるの? とびっくりして笑いだしてしまった。楽しくなったのだ。
 最後に「核」をつかった爆破があるのだが、その核に対する認識の甘さも「エンド・オブ・ザ・デイズ」や「悪魔と天使」なみのノーテンキさで、あきれてしまう。
 映像全体も、カラーを灰青のトーンで統一して「意味」を持たせようとしているけれど、もうすっかり古びた手法である。



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