安英晶「水族館」。
水族館で安英は魚ではなく水と向き合う。そしてその水が安英の体内の水と呼応する。
体内の水面はるか
花が散る はながちる
みずのなかを散るはなびら
さ く ら
(の/遺伝子 の
静寂)
「花が散る はながちる」。意味が文字に分解し、散っていく幻想が美しい。「はな」はさらに「さ」「く」「ら」と一文字ずつに分解し、散り、意味を幻想にしてしまう。その散る(下降)の動きの反作用のようにして「遺伝子」が浮かび上がってくる。
(の/遺伝子 の
静寂)
この部分の( )の使い方、/の使い方、1行の空白の取り方がとても美しい。「静寂」ということばを呼び出す間も、とてもいい。
抒情詩はいいものだなあ、と、ふと思った。
*
小杉元一「レクイエム」。
書かれている状況がよくわからない。何が書いてあるのかわからないけれど、次の1行がとても印象的だ。
耳は水にほどけてゆく
しきりに水を思いだしている。目でも指でもなく、耳が水を思いだしている。それは水の音であり、その水へとつながる様々な音でもある。
この「音」は安英の感じた「静寂」と、どこかで通じ合っているのだろうか。