監督 マイケル・マン 出演 コリン・ファレル、ジェイミー・フォックス、コン・リー
私の目当てはコン・リーである。「紅いコーリャン」以来、ずーっと彼女の演技が好きだ。コリン・ファレルと徐々に打ち解けていくときの表情がいい。喜怒哀楽を殺していた冷たい顔が輝く。セックスシーンの涙もすばらしい。
だが、最後の最後が、とてもつまらない。
コリン・ファレルが運び屋ではなく潜入捜査官だとわかった瞬間の演技。紋切り型である。裏切りに対する驚愕と憎しみが伝わってこない。暗黒街に生きて、そこで修羅場を見続け、そのうえでなお驚愕と憎しみにとらわれる、という感じが伝わってこない。「あ、嘘つき」というような軽い感じである。
ああ、コン・リーは善良なひとなんだなあ。善良な世界だけで生きてきたんだなあ、とそのとき思った。そして、不思議なことに、そのために、そのへたくそな演技さえいとしい感じになった。
あ、私は、コン・リーのファンなのだと、そのときあらためて思った。