一歳九ヶ月しかはなれていないあかんぼうなので
身につける全てのものがおさがり
おしめはもちろん
哺乳びんさえ
ベビーベッドにはすりキズがあり
だぼだぼの乳児服にはよだれのしみ
でも そのなかで
一心に問いかけてくるまっさらな笑顔
お古ばかりに包まれているから
なおさら目立つ まっさらなひとみ
お古がなんだい!
おれは生まれてきたばかりだ と
ああ そうだった
思ってみればわたしたちが立つ風景のすべては
おさがりだった
なるほどなあ。風景は「おさがり」か。大切に受け継いでいかなければならないのは、「おさがり」としての風景そのものもそうだが、私たちの周囲にあるものすべてが私たちだけに属すのではなく、後世に「おさがり」として伝えていかなければならないという意識だろう。川越はそうしたことを声高には言わない。あくまで「孫がかわいくてしかたがない」という口調の中に隠して語る。その、一種の無邪気さが美しい。