萩原健次郎『セルロイド界隈』再読その4 | 詩はどこにあるか

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 萩原健次郎『セルロイド界隈』再読その4。

 「ホッチキス」は『セルロイド界隈』のなかでもっとも自然で無理がない。ここにはつくられた抒情がない。ただ読者の想像力をくすぐることばの戯れだけかある。

なんの
関係で
ホッチキス
するのか
ももいろか
きいろか
大型か
グアバリと

がるのかあ

みなもと
橋かけるでしょ

かますのですね
まあ
ひとつその
交接
咬ませて
ください


尖頭
とがって
よろしくホッチキス
火照っしまって
てかてか
しますね
もしもし
そちらへ

がってもいいですか

 「股/がる」「かます」「咬ませ」る。そうしたことばが連想させるものを連想させるままにしておく。何もつけくわえない。抒情をつけくわえない。そのとき、つけくわえられていないものを読者は自分の体の中へ探しに行く。その探しに行く肉体が萩原と読者のあいだで共有される。
 そこにこそ「詩」がある。
 「もしもし/そちらへ/股/がってもいいですか」というのは、とぼけていていい。「もしもし」の使い方は最高にいい。ちょっと現実につかってみたい気持ちになるではないか。