中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(23) | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

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 「はるかな昔」。青春時代の、恋人を思い出す。

 

眼だけは思い出せる――青――だったと思う。

 

 「思う」ということばに触れて、私は、とてつもない悲しみを覚える。西脇風に、淋しさ、と言ってもいいかもしれない。

 なぜ、「青だった」ではないのか。

 「思う」とことばを重ねるとき、青という色だけではなく、「思う」その気持ちが動く。「思う」ということを、したいのだ。その青に対し、どう思ったのか。もう一度、「思い」たいのだ。その「思った時間」というか「思う」のなかにある時間が、西脇の言う「淋しさ」のように、そこに存在するのだ。存在して「くる」のだ。