中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(5) | 詩はどこにあるか

詩はどこにあるか

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 「テルモピュレ」。戦争での「正義」がテーマ。「連中は正義でひたむき」ということばが前半に出てくるが、後半に次の一行がある。

けっきょくエフィアルテスのたぐいが出てきて、

 「たぐい」ということばが、とてもおもしろい。「そんなヤツとは同類ではない」という侮蔑、怒りのようなものが噴出している。
 もし彼が裏切り者ではないときは、「たぐい」ということばは不要だ。
 「正義」には「たぐい」というものはない。それは、「ひとつ」なのだ。それが「ひたむき」という意味でもある。
 だから「ひたむき」が「たぐい」の伏線にもなっている(予感させる)のだが、この呼応のなかには戦士との「一体感」がある。中井(カヴァフィス)は、歴史家ではなく、この詩のなかでひとりの戦士になっている。