谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(23) | 詩はどこにあるか

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谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想(23)

(寂しさに入る)

寂しさに
入ると
空が
生き返る

過去の
影を
懐かしみ

未来の
幻を
もてあそび

円相を
転がして
戯れる
日々

 聞いたことはあるが、私がつかわないことばが、今回の詩集にはたくさんある。「円相」もそのひとつ。読んだ瞬間、一連目の「空」が「くう」に変わった。「無」があらわれ、動詞「入る」が「生き返」った。

 

 

 


(永遠が恵む)

永遠が
恵む
束の間の

時の
流れを
遡り

古楽器と
辿る
木版の
道に

咲き誇る
今日の
花々

 「永遠」と「今日」のあいだに何があるか。「木版の/道」に私は引きつけられた。私は木の彫刻家か木版画家に憧れたときがあった。あのときは、「永遠の花」が見えた。私の「永遠」は、あのとき、だったのか。

 

 

 

 

 

(あなたと)

あなたと

天と

闇が
光を生み
光が
闇を生む

大気と水
言葉と
音楽

終わらない世界
それだけで
いい

 「それだけ」と谷川は書くが、「それ」とは何か。「私」「あなた」を始めいくつも名詞が出てくる。「それだけ」というには多すぎる。一方、動詞は「生む」だけ。そうか、「生む」があるかぎり「終わらない」。