谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想
(椅子を引き)
椅子を
引き
立ち上がる
手が掴み
足が踏む
心は知る
己が自然を
世界は
愛おしく
世界は
恐ろしい
大気が
香る
この時空
*
世界は「香る大気」。手で掴めない。足で踏めない。でも、「肉体」は反応する。そこに「世界」が存在することを。「嗅ぐ」ではなく「香る」。主語が「私」から「私以外のもの」に交代する瞬間がある。
*
谷川俊太郎『虚空へ』(新潮社、2021年9月25日発行)は短い詩篇。私の感想は、いつもだらだらと長いのだが、谷川にならって短くしてみた。毎回「百字以内」と決めて書いてみる。