谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想 | 詩はどこにあるか

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谷川俊太郎詩集『虚空へ』百字感想

 

(椅子を引き)

椅子を
引き
立ち上がる

手が掴み
足が踏む
心は知る
己が自然を

世界は
愛おしく
世界は
恐ろしい

大気が
香る
この時空

 世界は「香る大気」。手で掴めない。足で踏めない。でも、「肉体」は反応する。そこに「世界」が存在することを。「嗅ぐ」ではなく「香る」。主語が「私」から「私以外のもの」に交代する瞬間がある。

 谷川俊太郎『虚空へ』(新潮社、2021年9月25日発行)は短い詩篇。私の感想は、いつもだらだらと長いのだが、谷川にならって短くしてみた。毎回「百字以内」と決めて書いてみる。