森鴎外「独身」 | 詩はどこにあるか

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鴎外選集 二巻 「独身」

冬の日。独身の主人公の家に友人が集まってくる。そこで、なぜお前は独身なんだ、という話になる。
主人公は「下女」と暮らしているから、下女と結婚した知り合いの話などがでる。
そんな話のひとつに、こんな描写。10ページ。(漢字表記は一部原文とは違う)

宮沢が欠をする。下女が欠を噛み殺す。

ここなんか、当たり前だけれど、うまいなあ、とうなる。

ふたりの関係がくっきり見える。しかも宮沢と下女は別の部屋にいるのだ。次に何が起きるか。それが、こんな短いことばで、だれにでもわかる。
肉体が正確にとらえれているからだ。

で、最後。19ページ。

これから独寝の冷たい床に這入ってどんな夢を見ることやら。

夢を読者に想像させている。
読者は主人公になって、それぞれの「夢」を見ることになる。
そしてそれは、きっと同じ夢だ。
そう感じさせるところがおもしろい。