廃棄された注釈(1)
五百ページを超す二段組の本のなかでは、実存ということばが、各ページにわりこみ論理を支配しようとしたいた。行間に腰掛けると下腹部が持ち上げられ、シャツがゆっくりと引き延ばされて、白く輝く。それを見せつけることで、実存は、贈与ということばが歓待ということばと結びつくのを遅延させようとしているところだった、というところまでことばが進むと「ページをめくる指は、実存の動きをいかがわしいセックス描写のようになぞっていることがわかった」ということばが挿入されて、文脈が乱れた。そのとき、解釈と注釈の目があった。解釈は実存の動きを横目で見ながら、話しかけることばを頭の中で繰り返していた。しかし、注釈と目が合った瞬間、考えていたことばが全部消えてしまった。「解釈とは、自分のことばを語ることではなく、いつも他人のことばを順序を変えて反芻することにほかならない」という実存が、わきをとおりぬけた。注釈は「贈与と歓待は実存によって形式化されるまでもなく、あらかじめ存在する形式の中で贈与と歓待に分離していくのだ」と余白にメモを残したが、それは削除によって放棄され、詩になることはなかった。