「聖母の左手(前·後編)」地球へ…同人誌をついに読む。 | ひさもとみきしょうじ

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連続ブログ小説「ケータイサラリーマン橋ユキヨ」[あらすじ]東京にある架空の商社「ひさもとみきしょうじ」で新規事業の"ケータイコミック"サイトのコンテンツ営業をする橋ユキヨの明日なき戦いを描く物語?!

禁断でも·…何でも無いんやがなぁ、と天城小百合先生ご本人からコメントをいただきましたが

だとしたら、禁断ではなくある意味、運命の書
と書きましたが、ここではこの作品をきっかけに天城先生に訪れた、今に続く苛酷な運命

ではなく作品の感想を中心に


「マツカを幸せにしたい!」

2007年4〜9月にTBSさん系列にて放送された、竹宮惠子先生原作の連続テレビアニメ「地球へ…」その第22話「暮れる命」そこで描かれたマツカの死、キースをかばったそのあまりに残酷な死に様に衝撃を受けた天城先生が、既に発症していた病を抱えながら、およそ二年を費やして描いた同人誌「聖母の左手(前·後編)」

マツカのキースへの愛と葛藤その末の死、そしてキースがマツカの遺したその想いに向き合った時、奇跡が…

アニメ本編では成就したとは言えないマツカのキースへの愛、マツカの想い、キースのマツカへの溢れる愛の吐露を描くだけではなく、このテレビアニメ「地球へ…」を観ていない人達にも理解してもらえる様に、というよりこのアニメをたくさんの人に観て欲しい!から、その死の場面のみ描くのではなく、この物語全体が分かる様に

天城先生の代表作「魔天道ソナタ」その連載終了後に描かれた同人誌「夜想曲」が本編世界を乱す事無く、まるで連載中のいちエピソードとして、しかも連載中に描ききれなかった部分を補完し、なおかつ自然に最終回へとつながり、最終回をより必然としたのと同じく、この「聖母の左手」もテレビアニメ「地球へ…」の一編、いわば第22.5話として、マツカのキースへの想いを成就させる事に留まらず、第17話「永遠と陽炎」をマツカの葛藤の象徴として、そしてマツカの死と邂逅をその後のキースの行動原理として、最終話までの流れに必然を与える作品となっていて

その総てを漫画にすると、ともすれば冗長になる恐れもあるところを小説パートと分ける事で回避し

テレビアニメ「地球へ…」を観た人も観ていない人も普通に読めるし、天城先生の行動原理も変わらない、本編連載中では救われなかった一個人としてのミカエルの心と身体の救済が描かれたのが「夜想曲」ならば、テレビアニメ本編ではついに救われなかったマツカの魂の救済が描かれたのが「聖母の左手」

「魔天道ソナタ」ファンの皆さんにも是非読んでいただきたい、天城先生入魂の一作です

ちなみに「夜想曲」については以下の記事を参照いただけると幸いです。
【後記】
2021年6月28日に「聖母の左手(前·後編)」画像までの部分をアップしてから二年と約5ヶ月、ようやく記事を完成させる事が出来たわけですが

テレビアニメ「地球へ…」が今年2023年3月29日にBlu-ray Disc BOXで発売されたり、先月9月6日の魔天道ソナタ連載終了30年があったりと、今年に入ってこの記事に追記する好機があったのですが結局出来ず、それから一ヶ月遅れの今月10月6日に書き始めたものの完成に至らず、本日10月27日に、しかも前回書いたものをかなり改編して、ようやく書き上げたわけですが

私が上述した「聖母の左手」の感想に嘘偽りは当然ありませんし、本気で皆さんに是非読んで欲しいと切望していますが、一方でテレビアニメ「地球へ…」におけるマツカの、同胞であるミュウに対する思い、そしてマツカの死がキースのその後の思考や行動に影響を与えたかについては、私は天城先生とは違った見解を持っていて 


マツカは何故だがそもそもミュウに自分の居場所が見つけられない、いわば根無し草で、それがキースと出会い、キースという居場所をようやく見つけたから、その居場所を自分の存在理由に命を賭した、だから同胞であるミュウと命を奪い合う事に葛藤も無ければ躊躇も無い、裏切りなんて端から思っていない

いわばキースこそがマツカにとっての地球(テラ)

一方キースのマツカへの愛情は正直分からない、テレビアニメ「地球へ…」の中のキースは決して機械では無く人間として、キースが人間として悩み苦しみながら成長していく姿を描いた物語だと私は捉えているのですが、その愛情がマツカに向けられていたかは分からない

そしてマツカとの日々と死がその後のキースの行動に影響を与えたかと言うと、私はそうは思わない…キース自身のミュウを殲滅する事への葛藤がマツカの姿として現れただけで、マツカとの交流も含めたこれまでのキースの人生の道程がその葛藤に、そして最終話に至らしめたと

他方テレビアニメ「地球へ…」のBlu-ray Disc BOXについて調べた時に、1980年4月26日公開の劇場用アニメ映画「地球へ…」のBlu-rayが2013年9月13日に発売されていて、その映像特典の一つとして制作段階でカットされた幻の未公開シーン「マツカの死」が初収録されていた事を知って

公開当時竹宮惠子先生に寄贈された同フィルムがBlu-ray発売が決まった当時発見されて、それで映像特典になったらしいのですが

なのでマツカの死はカットされたという事はやはり物語全体にとって大きな意味は無いのかもしれないし、しかし竹宮先生に寄贈されたという事は本来は、少なくとも原作者と原作漫画にとっては大きな意味があったのかもしれない

天城先生にとって竹宮先生は始まりの人、竹宮先生の「風と木の詩」と出逢って、そのJUNEに触れて、天城先生は漫画家になる事を決意した

そんな竹宮先生の「地球へ…」の同人誌に挑む天城先生の決意は如何ばかりだったか

その作品だったりキャラクターだったりへの思い入れを形にするのが同人であって、それは描く人の数だけあって良い…私の「聖母の左手」を読んで、というかそもそもテレビアニメ「地球へ…」を観てのその見解の相違も、天城先生は微笑みをたたえながら聞いてくれました

そんな天城先生も「聖母の左手」がより多くの皆さんに知られ、読んでいただける事を後編を発行した2009年6月21日以降、ずっと今でも切望し続けています

そんな様々な想いを込めて、ようやくこの記事を書き終える事が出来ました

「聖母の左手」が皆さんの手許に届く日を願って
(2023年10月27日記)