話題のビジネス本書評ブログ

話題のビジネス本書評ブログ

新書・古典問わず、話題のビジネス本に関する書評を
まとめていきます。
本を読む時間がない方も、購入を検討している方も
参考になるブログにしていきたいと思います。

Amebaでブログを始めよう!
本日は「ストーリーとしての競争戦略」を紹介する。

経営コンサルタントと会話をしていると、
正しい戦略ではあるが、何か本質的な血流が通っていない、
乾いた戦略を聞くことがある。

本当に企業が全力を以て当たり、
競争優位を築くための戦略とは何か。

時間軸の流れの中で、個々の打ち手が
有機的につながり、一部は合理性が一見ないものでも、
全体としては強固なつながりがある。
というものではないか、と考えさせるものである。

以下に本書の概要を引用する。
----------------------------------
ストーリーとしての競争戦略とは?

・ 戦略とは競合他社との違いをつくることである。競争の中で業界平均水準以上の利益をあげるには、競合他社との違いが必要である。
個別の違いがつながり、相互に作用する中で持続的で強力な競争優位が出来上がる。ストーリーとしての競争戦略は「つながり」に軸足を置いた視点であり、違いを生み出すための企業の「打ち手」の因果関係や論理に注目するものである。

優れた戦略ストーリーを組み立てるには?

・ 同じサッカーをするにしても、他社と違うパス回しの流れを確立すれば、競争優位を獲得できる。ストーリーが優れているとは、パスが縦横にきちんとした因果論理でつながっていることを意味する。

・ 優れたストーリーをつくるためには、本質的な顧客価値を捉えたコンセプトが何よりも重要となる。起点が空疎であれば、それに続けてどんな打ち手を繰り出したとしても良いストーリーはできない。
そして、他社との違いを構成する要素に一貫性を持たせ、ストーリーをつくる事が競争優位につながる。一貫性から生まれる競争優位は、構成要素の交互効果により、強力になる。

・ 違いをつくっても、それがすぐに他社に模倣されるものであれば、一時的な競争優位を獲得できても、すぐに違いがなくなり、競争優位は持続しない。「一見して非合理」というクリティカル・コアは競争相手が模倣しようと思わない点で持続的な競争優位を得る論理である。
部分的な非合理を他の要素と組み合わせて、ストーリー全体で強力な合理性を獲得する事ができれば、競争優位を長い期間、持続することができる。

この本では様々な企業の事例を用いて、面白い戦略ストーリーを分かり易く紹介している。優れた競争戦略とは何かについて、学ぶには最適な一冊である。


ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business .../東洋経済新報社

¥2,940
Amazon.co.jp

本日は「THE REASON WE START UP」を紹介したい。

パズドラで有名なガンホーを創業し、ベンチャーアクセラレーターも
行われている著名人、孫泰蔵氏の監修。

近年、起業にかかる資金が如何に激減し、
学生、若手社会人の起業にいい環境なのかとてもよくわかり、
シリコンバレーやスタンフォード大学の雰囲気もリアルに伝わってくる。

やりたいことが見いだせない方、サラリーマン生活に倦怠感を覚える方は、
ぜひ一読いただき、本当に行いたいことを見つめ直してもいいのではないか。

下記に本書の概要を引用します。

-------------------------------------
なぜ今、スタートアップなのか

この1、2年で目立ってきた就職と起業を巡る新しい傾向には、3つのことが挙げられる。

①やりたいことがあるから「起業」した。
起業家にとっては「やりたいこと」が1番大事なこと。どうしてもやりたいことがある。それをするには起業するしかない。この本来、当たり前のことをシンプルにやってみようと考える学生がたくさん現れてきた。

ex.ソーシャルトラベルサービス『trippiece』
大学3年の夏、「バングラディシュにソーシャルビジネスを見に行く」という旅行企画を、SNSを通じて提案したところ、2週間で18人もが集まった。参加者の興味軸が同じで盛り上がり共感することも多かった。この旅の経験があったので、起業すればここにチャンスがあると思った。

②新卒就職は2番目の選択肢だった。
学生時代にやりたいことを発見した若者にとって、新卒採用は明らかに機会損失にしかすぎない。新卒採用で大企業に就職して、組織の歯車となるサラリーマン人生を送ることこそが、起業よりもよほど機会損失が大きい。

③起業しやすい環境が整ってきた。
クラウド、オープンソース、SNSというIT技術の進展とともに、コワーキングスペースなどの起業家向けのインフラが充実し、10年前と比べて起業への敷居が圧倒的に低くなった。だから、バンド感覚の起業ができるようになった。

チーム3名が、起業からプロダクト・サービスのリリースまで6ヶ月間に必要な資金を計算すると、「20万円/1人月×3人×6ヶ月=360万円」。多少の経費を加えても、500万円で十分に経費が賄える。

若者たちは、景気停滞が続いていることで、将来にあまり期待を持てないということを肌で感じている。だから自分たちで何かやった方が面白いんじゃないかと直感的に考え始めている。

スタートアップする理由

仕事とは安定した収入を得るためと考えるのも一理ある。それでも、働くとはどういうことかについて、人は深く考え、こだわりを持って生きるべきである。

スタートアップする理由を一言で言うなら、「人生において最も大事な何かを得る事ができるから」と答えることができる。

その大事な何かとは、自分が苦しい時に本当に力になってくれる人が誰かわかったり、絶対絶命の時に救いの手をさしのべてくれたりする人に運命的に出会えるという「奇跡」である。

つまり、スタートアップを通じて「心から人に感謝する機会」を得ることができる。そのような喜びを得られることに比べれば、失敗なんてどうってことない。

社会のために仕事をする。
誰もが見過ごしている暗い場所を照らし出す。

そういう働きを見ている人がきっといる。僕らがスタートアップした理由は、そういうことである。


僕たちがスタートアップした理由/フォレスト出版

¥1,575
Amazon.co.jp

本日はロジカルシンキングの定番書、
「考える技術・書く技術」を紹介したい。

どのような論理構成が伝わりやすいのか、
人はどのような説明だと納得するのか、
等、物事を考え抜くため、あるいは資料作成の
コツが纏められている。

ビジネスの第一線で経営者向けのプレゼンテーションを
行う機会があるのであれば、意識すべき内容である。
読まれていない方は、一読していただければと思う。

----------------------------------------

ピラミッド構造で伝える

書いた文章が不明瞭なのは、多くの場合、書き手による考えの並び方が、読み手の頭の中の理解プロセスとうまくかみ合っていないことが原因となっている。

読み手にとって最もわかりやすいのは、まず主たる大きな考えを受け取り、その後にその大きな考えを構成する小さな考えを受け取る並び方である。
理想的な考え方の構成は、常にピラミッドを形作る。つまり、頂上に主たる大きな考え方があり、それを小さな考え方のグループが下で支える。

ピラミッドの中では、それぞれの考え方が縦と横に関連づけられる。縦の関係は、上部の考えが下部の考えを要約する。横の関係は、並んだ考えが何らかの論理的な共通点でグループ化される。

考えをピラミッド構造にすれば、主たる考えをまず述べることで、読み手はなぜそういう考えとなるのか、書き手に疑問を持つようになる。そこで、ピラミッドを一段下りて、その疑問に答えるという事を繰り返せば、考えをスムーズに伝えることができる。


トップダウンで考えを示す

人間の頭が短時間で一度に記憶できる事柄は、せいぜい7つまでである。4つ、5つの物事を提示されると、何らかの論理的な分類に従って物事をグループ分けしようとする。

すべての知的プロセス(考える、記憶する、問題を解決するなど)は、グループ化や要約の思考プロセスを伴う。

考えを書き表していく順序をコントロールすることは、わかりやすい文章を作成する上で最も重要なことである。最もわかりやすい順序とは、まず全体を要約する考えを述べ、そのあとに個々の考えを説明していくことである。

ピラミッド型の3つの鉄則

①どのレベルであれ、メッセージはその下位グループ群を要約するものである
②各グループ内のメッセージは、常に同じ種類のものである
③各グループ内のメッセージは、常に論理的に順序づけられている

論理的な並べ方には次の4つの方法がある。

①演繹の順序(大前提、小前提、結論)
②時間の順序(1番目、2番目、3番目)
③構造の順序(北から南、東から西など)
④比較の順序(1番重要なもの、2番目に重要なものなど)

わかりやすい文章を書くポイントは、各々のメッセージをピラミッド型に並べてみて、3つの鉄則と照らし合わせてみることである。


ピラミッドの作り方

①伝えようとしている主題を頂上に書く。
②主題について読み手のどのような「疑問」に答えれば良いか考える。
③「答え」を書く。
④読み手がその通りだと納得することを明確に書く。
⑤読み手を想定してQ&A応答を行う。
⑥「疑問」と「答え」を再チェックする。

上記の技術を通じて、自分の考えを完全に読み手の疑問に対応したものにできる。


考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則/ダイヤモンド社

¥2,940
Amazon.co.jp

本日は「ビジョナリーカンパニー②」飛躍の法則を紹介する。

偉大な企業は突飛なアイデアを次々に行うのではなく、
やるべきことを愚直に徹底的に行っている。
しかし、その行うべきことは厳しい現実を直視し考え抜いたもの、
というところが示唆に富んでいると思います。

ビジョナリーカンパニーのシリーズの中で、
実践的であることから、私はこの本を最もお勧めしたいと
思います。

下記にこの本の概要を引用します。

-------------------------------------
第五水準のリーダーシップ

飛躍した企業のすべてに共通する点は、第五水準の経営者に率いられていたことである。第五水準とは「個人としての謙虚さと職業人としての意思の強さを持ち、偉大さを持続できる企業を作り上げる」という経営者として最高水準の能力の事を指す。
第五水準の経営者の野心は会社に向けられていて、自分個人に向けられていない。謙虚でありながら、不屈の精神でなすべき事をする。

最初に人を選び、その後に目標を選ぶ

飛躍をもたらした経営者は、まずはじめにバスの目的地を決め、次に目的地までの旅をともにする人びとをバスに乗せる方法をとらない。
まずはじめに、適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきかを決めている。それは以下の理由による。

・「何をすべきか」ではなく「誰を選ぶか」から始めれば、環境変化に適応し易い。
・適切な人たちがバスに乗っていれば、動機付けや管理の問題がなくなる。
・不適切な人たちばかりでは、正しい方向がわかっても、偉大な企業にはなれない。

一方で偉大になれなかった企業には、一人のカリスマが最初に目的地を決め、その後に自分の考えを実行する兵士を選ぶことが多い。この場合、カリスマが退いた後に失敗する。

厳しい現実を直視する

飛躍した企業はすべて、自社が置かれている状況の真実を把握しようと、厳しい現実を直視する態度を持っている。そのために、上司が意見を聞く機会を設け、真実に耳を傾ける社風を作る必要がある。

針鼠の概念

偉大な企業になるには、単純明快な概念(針鼠の概念)を確立する必要がある。そのためには、次の3点を理解する必要がある。

①自社が世界一になれる部分
②情熱をもって取り組めるもの
③経済的原動力になるもの:自社の経営判断指標になる「×当たりの利益」を探す。

上記の3つの領域が重なる部分を明快にし、それをもとに一貫性のある目標と戦略を設定することで、企業は成長する。飛躍した企業は、針鼠の概念の確立に平均4年かかっている。針鼠の概念は、反復の過程で確立される。

規律の文化

ほとんどの企業は、バスに紛れ込んだ不適切な人たちを管理するために、官僚的な規則を作る。すると適切な人たちがバスを降りるようになる。
偉大な業績を維持するには、自ら規律を守り、規律ある行動を取り、針鼠の概念を熱狂的に信奉する人たちが集まる企業文化を作り上げることが必要である。

促進剤としての技術

技術は適切に利用すれば、業績の勢いの促進剤になるが、勢いを作りだす訳ではない。企業は自社にとって、どのような技術が重要なのかを針鼠の概念を基に採用すれば良い。


ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則/日経BP社

¥2,310
Amazon.co.jp

本日は「その数学が戦略を決める」を紹介します。

これは特に初めのワインの値段予測の話がショッキングであるが、
如何に人間の感覚が尺度としては不適切であるのか、厳しく迫る内容である。

人は、論理的な流れを超えた発想力に価値が大きいものと捉えられるが、
それがもし論理の繋がりの域を出ていないならば、
機械を超えることができないということである。


以下に本書の概要を引用する。
-----------------------------------------

ワインの値段を方程式で予測する

経済学者オーリー・アッシェンフェルターは、統計を使って巨大なデータ集合から隠れた情報を引き出すのが仕事だ。オーリーは、数字を分析してボルドーワインの品質を評価しようとし騒動を巻き起こした。

ロバート・パーカーのようなカリスマワイン名人の「口にふくんで吐き出す」手法に頼るかわりに、オーリーは統計を使って、ある生産年のどんな特徴が、ワイン競売価格の高低と相関しているかを見た。ワインは農産物だから、年ごとの気候に大幅に影響される。フランスのボルドー地方の数十年におよぶ気象データを使ってオーリーが見つけたのは、収穫期に雨が少なくて、夏の平均気温が高かった年に最高のワインができるということだった。データは方程式に実に美しく一致した。

ワインの質=12.145+0.00117×冬の降雨+0.0614×育成期平均気温ー0.00386×収穫期降雨

ワインの将来価格デリバティブが活発に取引されている世界では、オーリーの予測式はワイン収集家に大きなリードをもたらしてくれる。この発想が大きく広まったのは、1990年初頭のことだった。『ニューヨーク・タイムズ』が一面で、この新しい予測装置について記事を載せた。オーリーは、1989年ボルドーについて、まだ樽に入って3ヶ月、批評家すら試飲していないワインを「これは今世紀最高のワインになる」と予測した。

ワイン評論家たちは激怒した。パーカーはこの計量推測を「ばかげていてふざけている」と呼んだ。伝統的な専門家たちは群れをなして、オーリーとその手法の両方を否定しようとした。

しかし、予測は驚くほど正確だった。伝統的な専門家たちも、今では気候にずっと注意を払うようになっている。評論家の予測結果も、オーリーの予測式にずっと近くなっている。

専門家は統計分析に勝てない

ワインだけでなく、データベースに基づく統計分析は、他の分野でも増えている。直感や経験に基づく専門技能がデータ分析に次々と負けている。

人間の心には、各種の認知的な欠陥や偏りがあって、これが正確な予測能力を歪めてしまっている。人は重要そうに思える特異なできごとをあまりに重視し過ぎる。例えば、人々は「ニュースになるような」死(殺人など)の確率を系統的に過大評価し、もっと当たり前の死因の確率を過小評価する。

人は何かについて間違った信念を抱いてしまうと、それにしがみつき、既存の信念を裏付けてくれる証拠だけに注目してしまう。

こうした人間の欠点に比べて、絶対計算の予測は、どの要因をどれだけ重視すべきか見極めるのがうまい。だから予測も正確になる。

人間に残された出番は、頭や直感を使って統計分析にどの変数を入れるかを推測することである。何が何を引き起こすかという仮説を生み出すことである。


その数学が戦略を決める/文藝春秋

¥1,800
Amazon.co.jp