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話題のビジネス本書評ブログ

新書・古典問わず、話題のビジネス本に関する書評を
まとめていきます。
本を読む時間がない方も、購入を検討している方も
参考になるブログにしていきたいと思います。

本日はビジネスマン、特にコンサルティング会社でバイブルと言われる、
「仮説思考」を取り上げる。

積み上げ型の思考回路ではどうしても効率が落ちる。
様々分析した結果、当たり前のことしか言えない、
という経験をしたことがないだろうか。

正直、自分はそのような経験もしたし、そのような成果物も多々見てきた。
それを避けるのが、仮説思考であり、何が言えることが重要なのか、
示唆があるのかをまず考えるのである。

特に日常の事象について、様々思案することで、
仮説思考を鍛えるという方法論は是非実践すべき内容と思われる。

以下で本書の概要を引用します。

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仮説思考とは

「仮説思考」とは、物事を答えから考える事である。課題を分析して答えを出すのではなく、十分な証拠が無い時点で答えを出し、それを分析して証明することを指す。
自分がつくった仮説を検証するために必要な証拠だけを集めればよいので、無駄な分析や情報収集の必要が無くなり、非常に効率が良くなる。自分の仮説が誤っていた場合は、検証段階において証拠が集まらない筈であり、早い段階で間違えに気付くことができる。

仮説思考によるメリット

ビジネスパーソンが仮説思考を使いこなせるようになると、日常業務の上で大きく三つのメリットがある。

第一に、情報洪水に溺れなくなること。現状として、経営陣から社員まで大半が情報コレクターになっている。全ての情報を集めることで正しい意思決定が可能になるという「網羅思考」は意思決定を妨げるばかりか、必要な情報と不要な情報を同水準で並列してしまう。意思決定の際に役立つ情報というものは、既にある選択肢を狭めてくれる情報だけであり、仮説を持つことでこのような弊害を免れる事ができる。

第二に、問題解決に役立つこと。仮説思考は真の問題が何であるかを発見し、解決策をつくる上で非常に有効に働く。問題を考えついたり答えを探したりするプロセスというより、むしろ効率的に不要な問題や役に立たない解決策を消去するプロセスであり、迅速な意思決定を促す点において優れている。

第三に、大局観を持って仕事が出来ること。仮説思考では、ほとんど情報が無い状態から、問題に対する解決策や戦略まで踏み込み全体のストーリーをつくる。つまり、意図的に大局観を持ち、問題を構造化する作業が伴う。

仮説の検証・進化に向けて

仮説の検証段階において重要な事は、問題の解決策が実際に効果をあげる事ができるかどうか、そして経済的に実現可能性を伴うかどうかだ。この視点から仮説を検証する事で、より実現可能性の高い仮説へと進化していく。
仮説を進化させるためには、仮説の構築から検証までのサイクルを可能な限り短期間に抑え、出来る限り数多くの実験回数を繰り返すことがポイントである。単位時間内に行える実験回数が多い程、仮説がプラスに検証される確率は高まると言える。

仮説思考力を高めるためには

経験を積んだコンサルタントは、無意識のうちに脳内で仮説の構築・検証・進化を行う事ができる。しかし、このような能力を培うためにはかなりの経験が必要となる。
高次元の仮説思考力を身につけるためには、身の周りで起こる様々な事柄に対して日頃から問題意識を持つ事が有効である。そして、失敗を恐れないことも仮説思考力の向上に寄与する。失敗しても、繰り返し仮説構築・検証を行う根気と学習能力があれば、仮説思考力は必ず向上する。


仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法/東洋経済新報社

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本日はドラッカーの「プロフェッショナルの条件」を紹介したい。

最近よく言われるが、近年企業または組織の寿命よりも、
知識労働者の労働寿命の方が長くなり、
どのように仕事をし続けるのか、社会全体の問題を有する。
特に日本では終身雇用制が今も残り、
知識労働者の流動性は担保できていない。

そこで、本書は知識労働者の多くがプロフェッショナルとなるべきならば、
どのような考え方、時間の使い方をすべきであるのか、
極めて実践的な内容で語られたものである。

下記は本書の引用です。

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なぜ成果があがらないのか

肉体労働者は能率をあげれば良い。決められたことを正しく行う能力があれば良い。その成果は例えば、靴のように生産物の量や質で評価できる。
一方、知識労働者が生み出すのは、知識、アイデア、情報である。しかし、それら生産物は、それだけでは役に立たず、自らの成果を他の人間に供給することが求められる。

知識労働は、量やコストによって規定されるものではなく、成果によって規定される。しかし、組織に働く者にとっては、以下の要因によって成果をあげることが困難である。

・時間はすべて他人にとられる。
・日常業務に追われ続ける。
・他の人が、自分の貢献を利用しないと成果をあげられない。
・組織の中に成果が存在しない。
 つまり、客が製品やサービスを購入しなければ、組織としての成果があがらない。

従って、成果をあげるには特別の努力が必要である。

成果をあげる方法

①貢献に焦点を合わせる。
ほとんどの人が、成果ではなく、自らが持つ権限に焦点を合わせる。「組織の成果に影響を与える貢献は何か」を問うことが重要である。貢献に焦点を合わせることによって、成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向けるようになる。つまり、顧客などの観点から、物事を考えるようになり、仕事のやり方が変わっていく。

②自らの強みを知る。
強みを知るためにフィードバック分析を行う。何かをする事を決めれば、何を期待するかを書きとめ、1年後に期待と実際の結果を照合する。こうして自らの強みを知れば、以下の事を行う。

・強みにに集中する。
・その強みを伸ばす。
・知的な傲慢を正す。
・自らの悪癖を改める。
・人への対し方の悪い点を直す。
・行っても成果があがらないことは止める。
・努力しても並にしかなれない分野に無駄な時間を使わない。

③自らの仕事の仕方、価値観を知る。
自らの得意とする仕事の仕方を向上させるべきである。また、自らの価値観に合わないことをしても、心楽しまず、成果もあがらない。

④時間を管理する。
時間を記録して分析し、仕事を整理し、重要な仕事に時間を割く。成果をあげるには、自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。

⑤最も重要なことに集中する。
成果をあげる人は、もっとも重要なことから始め、一度に一つのことしかしない。自らの強みを生かすには、その強みを重要な機会に集中するしかない。集中するためには、以下のポイントに基づき、優先順位をつけることが必要である。

・過去ではなく未来を選ぶ
・問題ではなく機会に焦点を当てる
・横並びではなく自らの方向性をもつ
・無難で容易なものでなく、変革をもたらすものに照準を合わせる


プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))/ダイヤモンド社

¥1,890
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本日は現代のネットビジネスの概念を分析する「FREE」を取り上げる。

特に21世紀に入りますます、通信のコスト、サーバーコスト等、
ベンチャー企業立ち上げにかかるコストは大幅に低減し、
無視できるレベルになっている。


その中で、無料で多くのユーザーを獲得するビジネスが流行し、
広告、一部有料ユーザー、他商品の購入に誘導等による、
課金や、純粋に無料で提供し続けるサービスも存在する。

そのようなビジネスがどのようなビジネスモデルに立脚し、
なぜその中で大きな時価総額を有する企業が生まれているのか、
また、純粋に無料で提供し続けているサービスが何に支えられているのか、
多くの示唆が得られる優れた書である。

以下に、その概要を引用する。

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なぜ無料のビジネスが成り立つのか

Google、Firefox、リナックス、Facebook。ウェブの世界では無料でサービスを提供しているにも関わらず、大金を稼いでいる人々がいる。21世紀の無料(フリー)は、20世紀のものとは違う。アトム(原子)からビット(情報)に移行することで、限界費用(コスト)が限りなくゼロに近づき、無料のビジネスモデルが成立する。


これまでの無料サービス

・カミソリ本体無料、替え刃は有料
・携帯電話の本体無料、通話料有料
・コーヒーメーカー無料設置、コーヒーパック有料


ビット経済の特徴

オンラインの世界であるビット経済では、ものは安くなり続ける。これは、コンピューターが大規模集積化することで情報処理能力、記憶容量が飛躍的に大きくなり、通信帯域幅が速くなることで起こるもので、コストは限りなく無料に近づいている。アトム経済では、コストがゼロにならないため、何か他のものでお金を払わなければならないが、ビット経済では無料は本当にタダである。


無料のビジネスモデル4つの分類

①直接的内部相互補助・・・他のモノを売ることで成り立つ。
ex.ウォルマートのDVD割引キャンペーン。DVD以外のモノも売れる。

②三者間市場・・・二者間は無料で交換し市場を作り、第三者が参入コストを払う。
ex.テレビやラジオなどの無料メディア。 広告収入によって収益を得る。

③フリーミアム・・・無料版と有料版を提供する。
          一般的に5%の有料ユーザーが無料ユーザーを支える。
ex.無料電話のスカイプ。拡張機能を有料で売る。

④非貨幣市場・・・対価を期待しない。
ex.ウィキペディア


フリーが武器となる

今日、市場に参入するもっとも破壊的な方法は、既存のビジネスモデルの経済的意味を消滅させることである。既存のビジネスが収益源としてる商品をタダにする。すると、顧客は新規参入者のところへ押しかけるので、別のモノを売れば良い。フリーはモノやサービスを最大数の人々に届ける最良の方法である。
Googleはこれを最大化戦略と呼んでいる。限界費用がゼロなので、どこにでもモノを配ることができる。


無料のルール

①デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる
②アトムも無料になりたがるが、力強い足取りではない
③フリーは止まらない
④フリーからもお金儲けはできる
⑤市場を再評価する(無料にすることで、別の周辺市場を見つける)
⑥ゼロにする(無料にすることで何ができるか考える)
⑦遅かれ早かれフリーと競いあうことになる
⑧ムダを受け入れよう
⑨フリーは別のものの価値を高める
⑩稀少なものではなく、潤沢なものを管理しよう


フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略/日本放送出版協会

¥1,890
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本日は競争の戦略について紹介したい。

本書では、業界の魅力度を考察する、5Forcesが有名であり、
実際のビジネスの場面でも有効な最も強力なフレームワークの一つである。
また、それとともに、企業の収益性を決めるのは、
・業界の魅力度
・業界内の競争優位性
の2つであると、言い切っているところも本質的で面白い。

以下に本書の概要を引用する。

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業界のプレイヤー

業界構造を分析する視点として、自社を取り巻く業界のプレイヤーを、大きく5つに分けている。①競争業者(既存の競合プレイヤー)、②買い手(自社商品・サービスの顧客)、③供給業者(原材料などのサプライヤー)、④新規参入業者、⑤代替品の5つである。


5つの競争要因

大きく5つのプレイヤー・利害関係者がいることで、企業は5つの競争要因にさらされている。具体的には、①競合するプレイヤーとの敵対関係、②買い手の交渉力(販売価格引き下げ要求など)、③売り手の交渉力(仕入価格引き上げ要求、供給制限など)、④新規参入の脅威(新しいアイデア・ビジネスモデルでの参入など)、代替商品・サービスの脅威(近しい機能をもつ商品・サービスにより市場を奪われるなど)がある。


3つの基本戦略

業界の構造を5つの要因で捉え、将来の方向性を見定めたうえで企業がとる戦略としては、3つの基本戦略を掲げている。

①コストリーダーシップ戦略は、競争業者よりも低コストを実現し、規模を獲得することで競争優位を獲得する戦略である。
②差別化戦略は、業界のなかで特異と考えられる独自性を発揮する戦略。独自性とは、商品・サービス自体の独自性にとどまらず、サプライチェーン、チャネルなども含め、競争業者と比べた違いである。
③集中戦略は、業界全体ではなく特定のターゲットに絞り、低コストもしくは差別化した商品・サービスを提供する戦略である。


業界環境の分類

どのような戦略をとるかは、業界環境にもよる。そこで、業界環境の分類を試みる視点として、①業界の集中度、②業界の成熟状態、③国際競争の影響を掲げている。


5つの類型的業界環境

そこから、類型的な5つの業界環境を示している。集中度の低い①多数乱戦業界、業界の成熟状態の違いから②生まれたての先端業界、③成熟期へ移行する業界、④衰退業界、さらに⑤国際競争に巻き込まれている業界の5つを代表的なものとして紹介しており、戦略の要諦を示している。


競争の戦略/ダイヤモンド社

¥5,913
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Yコンビネーター
ランダル・ストロス著 滑川海彦・高橋信夫訳

最近Yコンビネーターや500startups等、ベンチャーアクセラレーターが話題ですが、
その実態を具体的に表した本です。
ITベンチャーを立ち上げるための資金が急激に少なくなった今、
Yコンビネーターの方法論の有効性は高いでしょう。
特にシリコンバレーの起業人材の吸引力を源としたスタートアップ企業数は、
今もなお米国の強みであることを感じざるを得ません。

一方で、この企業が成功するということの確度は、
プロにもわからないということが、ベンチャーの難しさも表していると思います。


下記は本のハイライトになります。
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ポール・グレアムは応募者の選考にあたって年齢だけでなくチームワークを重視する。ストレスの多い起業生活を乗り切っていくためには緊密なチームワークが必須である。そして、アイデアよりも創業者たち自身に注目する。アイデアで見ると、同じ学期で重複したりして選考の決め手にならない。

YCが最終候補として面接に呼ぶのは2000組の応募チームのわずか9%以下だ。YCのパートナーたちは最終候補170組を面接し、64チームが選ばれた。グレアムは参加が決まった創業者を前に、この場にいるチームの半分以上は失敗すると告げた。

YCに選ばれることが難関(合格率3%)であるのに、そのYC卒業生が成功するのは同じくらいの確率の難関なのだ。もしかするとスタートアップの最終的な成功率は0.3%くらいかもしれなかった。

「急いでローンチしろ」はグレアムの口癖だ。なにかアイデアを思いついたら最小限動くモデルをできるだけ早く作れ。作りかけのプロトタイプでも構わない。とにかく現実のユーザーの手元に届けて反応を見る。そうして初めてそのプロダクトがユーザーの求めていたものなのかどうかがわかる。

グレアムは「数字で測れるものを作れ」という格言が好きだ。数字で測れる事は、プロダクトの改善をもたらす。グレアムは売上やユーザー数のような重要な項目を選んで毎週、成長目標を設定するように勧める。

YCに参加するスタートアップは、そこそこのアイデアから始め、そこへグレアムがもっと大きく拡大する方法を教えてくれる、というのが典型的だ。そして、最大のモットーは「人が欲しがるものを作れ」だ。

デモ・デーが近づくにつれ、アイデアを形にし始めて間もない創業者たちの間に不安が広がる。果たして自分たちのストーリーが有望である事を、投資家たちに納得してもらえるだろうか。グレアムや他のパートナーにしても、この不安を解消してはくれない。

デモ・デーの魅力は、集まったスタートアップの1つが急成長して評価額何十億ドルのスターになるかもしれないという事だけではない。他の投資家たちが花形スタートアップの価値を認識した後よりも、はるかに有利な条件で資金を投入するチャンスがある。

63チーム(1チームは辞退)中の12チームは追加の資金調達ができずにいた。7チームは1万5000~6万ドルという少額の資金を得ていた。一方で投資家の興味を強く引きつけたスタートアップの資金調達は非常に順調だった。51チームの追加調達額の中央値は85万ドルだった。

何かが始まる時、そこには必ず希望がある。Yコンビネーターは同時に何十という始まりを実現させている。この事は、YCの創業者たちに将来、大きな役割が与えられる事を予感させるものだ。


Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール/日経BP社

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