『カランコロン』
『カランコロン』
下駄の音がなる。
砂浜では音一つしないけれど、どうやら都会のアスファルトではちょうどよいらしい。
防波堤の上、心地よい風は裸足で受けて。
風に舞う砂は頰に張り付いた。振り払うそばからまた張り付いて、夕陽は海に沈んでいった。
『カランコロン』
意気揚々と歩いてみれば慣れない下駄で階段を踏みはずす。
『ガランゴロン』
確かに暑かったはずなのに、流れる言葉の温かさは晴れやかな風のようで、軽やかに香る。
『カランコロン』
夜の風は涼しくなった、
『ガランゴロン』
はずなのに。
言葉はもはや石の重さをもって、唐突に流れることはなくなった。
夏真っ只中は過ぎ去って、秋の予感。
その風に暑苦しさを押し流して欲しいんだ。本当は。
身体中に纏わりつく、「ありとあらゆるもの」を「ありとあらゆる感情」を取り払って欲しいのに。
なのに秋めいてはまた蝉の声、秋めいてはまた夏の風。
空を見上げて
『ガランゴロン』
足下を眺めて
『ガランゴロン』
夏の残り香だけが過ぎていく。
夢の中では
『カランコロン』